大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(刑わ)4125号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(一) 本件公訴事実の主たる訴因は、次のとおりである。

「被告人は、東京都足立区中居町六三番地所在の足立郵便局に勤務し、集配課員として郵便物の配達業務に従事していたものであるが、昭和四一年七月四日午後六時三〇分頃、同区本木一丁目九〇一番地木村君子こと洪君友方において、配達中の足立郵便局長須藤秀男の管理にかかる木村政男こと秦午生差出し木村ヒロシこと秦尚鎬宛の電信為替書留郵便物一通(現金五〇万円在中)を窃取した。」

(二) しかし、前掲各証拠を綜合すると、次の事実が認められる。

すなわち、被告人は、昭和二五年一〇月頃から前記郵便局に勤務し、集配課員として郵便物の配達業務に従事していた。昭和四一年七月四日午後五時頃、被告人は、前記秦午生差出し秦尚鎬宛電信為替書留郵便物二通(いずれも現金五〇万円在中)を含む書留郵便物六通および速達通常郵便物一四通位を配達するため、これを携帯して同郵便局を出発した。そして、順次右郵便物を配達しながら、同日午後六時三〇分頃、前記洪君友方におもむいたところ、たまたま同人は不在で、同人の長女の木村光子こと秦敏愛(当一三年)および三男の木村秀こと秦秀(当一一年)だけであつた。そこで被告人は、かねて釣道具類等の借財があるところから、右子供達の目をかすめ、前記現金五〇万円在中の電信為替書留郵便物二通のうち一通を領得し、在中の金員をもつて借財等の支払いにあてようと考え、前記秦敏愛の差し出した印鑑を右書留郵便物受領証二通に押捺したうえ、右書留郵便物一通のみを同人に交付し、他の一通は、これを同人に交付することなく、自己のズボンポケツトに入れて洪方を立ち去つた。同日午後七時頃、配達を終えた被告人は、右ポケツトに入れた書留郵便物一通を前記郵便局内の自己の被服箱に入れて隠匿し、数日後右書留郵便物を自宅に持ち帰つて開封し、在中の現金五〇万円をとり出した。

(三) そこで、右の事実関係に基づいて考えると、被告人が領得した本件書留郵便物について、被告人は集配課員として配達するため携行して局を出発したのち、これを宛先に配達するまでの間、同局長の委託を受け、現実に握持して事実的支配のもとに置いており、業務上占有していたものと解するのが相当である。検察官は、本件書留郵便物の全体の業務上の占有者は足立郵便局長であつて被告人ではない旨を主張しているけれども、たとえ、被告人が本件書留郵便物の配達業務につき右郵便局長の指揮監督に服すべき地位にあつたとはいえ、被告人の本件書留郵便物に対する占有は否定しえないものといわねばならない。そして、被告人が前記洪方において、自己の用途に充てるため、本件書留郵便物を秦敏愛に交付せず自己のズボンポケツトに入れたことにより、業務上横領罪が成立し(以後の隠匿、開披等の行為は、いわゆる事後行為にあたる。)、窃盗罪を構成するものではない。(新関雅夫)

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